はじめに
Query Storeは単独でも強力なツールですが、他のSQL Server機能と組み合わせることで、さらに効果的なパフォーマンス管理と最適化が可能になります。この記事では、Query Storeと他のSQL Server機能、特にAutomatic TuningとQuery Performance Insightとの連携について詳しく説明します。
Automatic Tuningとの統合
機能の概要
Automatic Tuningは、SQL Server 2017以降で導入された機能で、Query Storeと密接に連携して動作し、データベースのパフォーマンスを自動的に最適化します。
主な利点
- 人間の介入なしに、継続的なパフォーマンス最適化が可能
- リアルタイムでのパフォーマンス問題の検出と修正
- DBAの負担軽減と、より戦略的なタスクへのフォーカス
設定方法
データベースレベルでAutomatic Tuningを有効化するには、以下のT-SQLコマンドを使用します。
sql
ALTER DATABASE [YourDatabaseName]
SET AUTOMATIC_TUNING ( FORCE_LAST_GOOD_PLAN = ON );
動作の仕組み
- Query Storeがクエリのパフォーマンスデータを収集
- Automatic Tuningがこのデータを分析し、パフォーマンスの回帰を検出
- 回帰が検出された場合、以前の良好なプランを強制適用
- 適用後のパフォーマンスを監視し、改善が見られない場合は元に戻す
ベストプラクティス
- 初めは監視モード(FORCE_LAST_GOOD_PLAN = OFF)で開始し、推奨事項を確認
- 段階的に自動チューニングを有効化し、影響を慎重に観察
- 定期的にAutomatic Tuningの推奨事項とアクションをレビュー
制限事項
- すべてのシナリオで効果的とは限らない(例:データ分布の大きな変化がある場合)
- 複雑なワークロードでは、人間の判断が依然として重要
Query Performance Insightとの関係
機能の概要
Query Performance Insight(QPI)は、Azure SQL DatabaseとSQL Managed Instanceで利用可能な機能で、Query Storeのデータを使用してインテリジェントな分析と推奨事項を提供します。
主な利点
- 直感的なグラフィカルインターフェースによるパフォーマンス分析
- トップNクエリの自動特定と詳細な分析
- 長期的なパフォーマンストレンドの可視化
使用方法
- Azure ポータルからアクセス可能
- データベースの「インテリジェント パフォーマンス」セクションで利用可能
提供される情報
- リソース消費量の多いクエリのリスト
- クエリごとの詳細な実行統計
- 時系列でのパフォーマンス変化のグラフ
- クエリテキストとプラン分析
Query Storeとの関係
- QPIは基本的にQuery Storeのデータを使用
- Query Storeが有効で適切に設定されている必要がある
- QPIの分析精度と有用性は、Query Storeの設定とデータ品質に依存
ベストプラクティス
- Query Storeの保持期間を適切に設定し、長期的な分析を可能にする
- 定期的にQPIのダッシボードをチェックし、パフォーマンストレンドを把握
- QPIの推奨事項を慎重に評価し、適用前にテスト環境で検証
制限事項
- オンプレミスのSQL Serverでは利用できない(Azure環境限定)
- 非常に複雑なワークロードや特殊なシナリオでは、追加の手動分析が必要な場合がある
その他の関連機能との連携
- インデックス調整アドバイザー: Query Storeのデータを利用して、より精度の高いインデックス推奨を提供
- データベースエンジンチューニングアドバイザー: Query Store情報を活用して、より包括的なチューニング推奨を生成
- 拡張イベント: Query Storeと組み合わせることで、詳細なパフォーマンス分析が可能
- 動的管理ビュー(DMV): Query Storeデータと DMV 情報を組み合わせて、より深いインサイトを得る
まとめ
Query StoreとAutomatic Tuning、Query Performance Insight、そしてその他のSQL Server機能を組み合わせることで、データベース管理者は包括的なパフォーマンス管理ソリューションを構築できます。これらの機能は相互に補完し合い、より効果的なデータベースパフォーマンスの最適化を可能にします。ただし、各機能の特性と制限を理解し、適切に組み合わせて使用することが重要です。継続的な監視と調整を行うことで、これらの機能の相乗効果を最大限に引き出すことができます。